終わったあとって、妙に気まずい。
 どういう行動をとればいいのか悩む。
 遊戯は呼吸がおちつくと、ベッドのシーツをひっぺがし「風呂はいってくる」と言うなり部屋を出て行ってしまった。今はオレひとりだ。
 頼まれた通り、新しいシーツを敷きながらもんもんと悩む。
 ……やっぱ、まずかったかな。
 痛そうだったもんな。
 無理しなきゃ、よかったなぁ。
 オレが突っ込まれればよかったかなぁ。
 あたまの中がぐるぐるする。
 あー、くそ。お互い好きなんだし、キスだってしてたし、セックスしたって、別に構わない。そう思うのに。
 なんで気まずいんだろ。
 うまく出来なかったからかなぁ。
 良かったのかな、遊戯のやつ。
 下手だったかなぁ。
 失望されたらどうしよう。
 男相手、初めてだもんなぁ。
 素股で、すませとけばよかったなぁ。
 すまたですませる……。
 スマタデスマセル……。
 すまたですませるって、だじゃれみたいだなぁ。
 あほか、オレは。


「何やってんの?」
 ベッドの上で、ぼかぼか自分の頭を殴ってるところに遊戯がもどってきた。きっちりパジャマに着替えて、頭も乾かしてきたみたいだった。
「城之内くんも、お風呂入ってくるといいよ」
 遊戯の態度は、いつもとあんまり変わらない。
 オレは無茶苦茶、不安になった。
「あ、あのさぁ」
 オレはうわずった声を出しながら起きあがった。椅子に座ってた遊戯のちいさな肩を掴む。風呂上がりのいい匂いがした。
「どうしたの?」
「オレのこと、好き?」
 遊戯はきょとんとした顔つきでオレを見上げた。
「城之内くん?」
「オレのこと、好き?」
「城之内くんってば?」
「なあ、好きかよ」
「あのね」
 だって心配なんだ。これぐらいで嫌われると思ってない。これで友だち止めるような奴だなんて思ってない。だけど自信もない。好きで居続けてもらえる自信がない。ビデオみて盛って、いきなり突っ込んじゃって。オレのこと、呆れてないか? 下手くそだと思ってないか? 自分勝手なやつだって思ってないか? ひどい奴って思ってないか?
 考え始めると、どんどんどんどん暗い考えになる。
 そこまで考える必要ないんだろう。
 理屈じゃわかる。
 オレだって、これまでだったら考えたこともなかった。
 嫌われたらそれで終了すればよかった。
 イヤになったら別れればよかった。
 また新しい相手を見つければよかった。
 なんでもそうだった。
 どうでもよかった。

「城之内くん」
 遊戯が、オレの頭を撫でる。
 その撫で方がやさしくて、なんだか泣きそうになって、そんな顔みせたくないから、遊戯の胸に顔を埋めた。


 ああ、わかった。
 オレって、遊戯にすっげぇ嫌われたくないんだ。
 遊戯に見放されたくないんだ。
 どうしていいか、わかんねぇぐらい好きなんだ。
 これっぐらいで、どうにかなっちゃうぐらいに好きなんだ。


「あのさ、城之内くん」
「うん」
「ボクこういうの最初だしさ、痛かったし、いきなり生で突っ込まれるし、出されるし、ちょっとひどいなーって思ったけど」
「うん」
「でも、なんていうのかな、よかったよ」
「ほんとか?」
「うん。ボクは城之内くんのことが、すごく好きだって実感できた」
「ほんとに?」
「好きだよ」
「ほんとに?」
「好きだ」
「愛してる?」

 遊戯はぎゅっとオレの頭を抱きしめながら、城之内くんってほんと馬鹿だよねって、言ってくれた。
 すごくやさしい声だった。
 馬鹿呼ばわりされるのが、こんなにうれしいのなんて初めてだった。


 たぶんこういうのが、恋っていうやつなんだと思う。

END.