「あ、エロマンガ」
 ボクの部屋にあそびに来ていた城之内くんが、ベッドのわきにおいてあった本を取りだした。高々ともちあげて、ひらひら見せびらかす。ボクのだから知ってるって。
「いいじゃんかよー」
 とびついて取り上げようとするけど、もちろん届くわけがない。っていうか、エロ本の1冊や2冊、城之内くんには見られたって恥ずかしいわけじゃないし。別に、そんなに見られて恥ずかしいようなアブノーマルな性癖の本をもってるわけじゃないし。杏子だったら恥ずかしいけど。
 でも、こうやって城之内くんにとびついたりするのは楽しかったりする。しばらく回りをぐるぐる回ったあと、すこし勢いをつけて、ジャンプして、城之内くんの上半身にセミみたいにしがみついてやった。
「重いぜ、遊戯」
 笑いながら、ベッドに倒れ込む。そのままキスなんかしたりして。なんか、ボクらってバカップルみたいだ。城之内くんと一緒にいると自分でもちょっと頭おかしいなーって思うときがある。うかれすぎ。
 城之内くんはベッドに腹ばいになって、本を見はじめた。ボクも隣でねそべる。
「鬼○仁?」
「そう」
「こーゆーの好き?」
「うん」
 ボクは、ロリっぽいのとか、熟女とかは好きじゃなくて、ごく普通の年頃のナイスバディ☆な女の子がえっちな目にあっちゃうのが好きだ。成人向けの本は買おうとしてもお店のひとに止められるので、ギリギリ成人指定のないやつ。
「ふーん」
 城之内くんはつまらなそうに返事をした。むっとした感じ。城之内くんも、こういうの好きそうかなって思って買ったんだけど、嫌いだったのかな? 実写のほうがいいのかなー。でもヤンサンぐらいなら買えるけど、エロ本買えないんだよね。グラビア写真集は高いしさー。
「お前さぁ」
 いきなり低い声だった。ボクはちょっとびっくりして城之内くんを見た。
「オレと、どっちが好きなんだよ」
 ボクは目をぱちくりさせて、城之内くんを見つめた。
 城之内くんは、ボクの方を伺うようにじっと見つめ返している。
「城之内くん」
「あに」
「エロマンガと比べないでよ」
 そりゃ、えっちなマンガも好きだけどさ。
 比べられるわけないじゃん。自分だってこういうの嫌いじゃないくせに。
「でもお前、これズリネタに使ったりしてんだろォ?」
 そりゃまあ。ちょっとは。
 てか、どこが悪いのさ。
「オレなんて、いつも抜くときお前のこと考えてんだぞ。毎日、毎晩」
 それは、もしかしてキミはボクをそういう用途で活用しているわけですか?
 毎日。毎晩。
「恋人同士なんだから、あたりまえだろう」
 そーなのかな。
「お前、ずりぃよ、浮気だよ」
 そう言われても。
「反省してるか?」
「反省ってさ」
「オレのこと愛してないのかよ?」
 こういうセリフを素で聴くところが城之内くんのすごいところだよね。
「好きですけど」
「じゃあ、浮気しないで、オレのこと愛してるって言ってみ」
 日本男児はそういうこと真顔で言えないよー。
 そう言ったら、城之内くんはボクの脇腹をくすぐりはじめた。ひどい。すぐに、そうやって身体にものを言わせようとするんだから。でもボクも黙ってやられるわけにはいかない。反撃を開始するぜー!
 ボクらは、きゃあきゃあ言いながら、結局ベッドの上ですることをしてしまった。

 でもさ、マンガと同じセリフを言わせようとすんのは勘弁してよね、城之内くん。