だって、お年頃だし。

 キスするのは好きなんだ。遊戯はそう思った。城之内くんとキスするのはとても好きだ。目を閉じてやわらかい薄い皮膚をふれあわせるだけで、陶然としてしまう。よく考えれば手をつなぐのとたいして変わらない行為なのかもしれないのに。皮膚ってところでは、同じことだ。口って特別なのかな。
 彼の唇のかさついた感触も嫌いじゃない。でも学校でするのはイヤだ。ふたりともお金がないからラブホテルとか行けないけど、ボクの部屋ですればいいじゃんか。
「でもさ、今日バイトでさ」
 困ったような顔で、時間ないからと言われると遊戯は抵抗できなかった。キスだけ、キスだけだからって。すぐ終わるからって。医者が注射をうつ時みたいなこと言うし。
 ああもう、まったく。
 君は馬鹿だし、ボクも馬鹿だ。ボクだって君が好きだし、キスはしたいし、もっと他のこともしたいし、死ぬほどいちゃついていたい。でもここは放課後とはいえ教室なんだけど。誰もいないからってさ。盛りすぎだぜ、城之内くん。
 城之内は床に座り込んで、遊戯を腕の中にすっぽりと抱きかかえている。遊戯の顔をみて笑うと、頬にキスをし、目蓋にキスをし、それから唇にキスをした。ああ、また唇があれてるなぁと遊戯は思った。ちゃんとごはん食べて栄養とってるのかなーと、キスをしているときにはあまり似つかわしくない感慨に遊戯はふけった。
 城之内は、髪を脱色してたりするわりに、あんまり見かけに気を遣わない。眉を真剣に整えたり、休み時間ごとに髪をチェックしたりはしない。授業のあとにでよく寝跡をほっぺたに付けてたり、涎のあとが白く口元あたりに残っていたりもする。髪もきしきしと痛んでいる。でも、そういうところも好きなんだよなと遊戯は思った。つい、かわいいとか思っちゃうんだぜ。自分は格好いい系だと思っている城之内くん本人には言わないけど。
 結局のところ、城之内ならなんでもいいのだ。
 ああ、ボクってやつは本当に馬鹿だ。
 城之内の舌がふかく入り込んでくる。上あごの部分をくすぐられて、思わず声がもれそうになる。ちゅうっと強く舌を吸い上げられたあと、荒く息をつく遊戯の耳元で、城之内が言った。
「なあなあ、フェラしない?」
 ああ、まったくこんなことを堂々と教室でうれしそうに言う男なのに。
 どこがキスまでなんだよ。
 遊戯は、城之内の舌を軽く噛んでやった。
 
 続きはいずれまた後ほど。