クリスマスのパーティは楽しかった。
 みんなで、お菓子だの、料理だの、飲み物だの持ち寄って、一人暮らしの獏良くん家で思いっきり騒いだ。
 クリスマス用のCDをかけて、パーティゲームをやって、お酒も出てきて、酔っぱらって、すっごくくだらないことでお腹の底から笑った。涙が出るぐらい笑った。本当に楽しかった。
 だから、ちょっとセンチメンタルな気分になった。
 「彼」がいなくなっても楽しいんだなって。
 もちろんそれは当然のことだったけど。
 だって来年になったら、杏子はアメリカに行ってしまう。向こうの大学に入る準備をする学校に行くらしい。
 城之内くんは就職するって言ってる。高校に来た就職案内で決めちゃったそうだ。
 御伽くんは、いまは家のお仕事のお手伝いをしてる。大学受験もするけど、今更勉強する必要ないからって。
 それを聞いた本田くんは、オレは予備校通いに必死だっつーのにとぼやき、獏良くんはボクだって一緒に予備校行ってるじゃないと笑った。
 彼のことは誰も何も言わなかった。言わないでいてくれてよかったと思った。
 だって同じだと思っていたいのだ。
 来年になれば、学校を卒業すれば、こうやって会うこともなくなってしまうかもしれない。ボクらは友だちで、ずっと友だちでいたいけど、ずっと一緒に居られるわけじゃない。それぐらいは知っている。
 でも、そういうことと同じだと思いたいのだ。そんな気持ちでいたいのだ。三千年の時を越えていってしまった彼だって、また不意に会えるかもしれないって、そう思いたいのだ。また会ったら「ひさしぶり! 元気だった?」そんな風に言えるように。
 ほてる身体を冷やすためにバルコニーに出た。夜風が強かった。寒いけど、それでよかった。ちょっと目元を拭って顔をあげたら、みんなのところに戻ることにしよう。
 夜空のてっぺんの方には、お月様が煌々と輝いていた。