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 ティッシュの山をひとしきりつくったあと、顔を洗って外にでかけることにした。いつまでも泣いていてもしかたない。そういう風に思えるだけ、少しは大人になってしまったのだ。いつだってなんだって終わりは来るのだ。それが今日という日だった。それだけのことだ。
 遊戯はクリーニングに出すワイシャツを手提げ袋にいれて、片手で持った。ジーンズの後ろポケットに財布をつっこんで外に出た。ひさしぶりにチョーカーをつけて、腕にもアクセサリーをつけてみた。高校生の頃にしてた格好だから、もう似合わないかもしれない。
 もう夕方で、空は赤くなっていた。休みの日はこれだけで潰れてしまいそうだ。
 帰りに、なにか食材を買い込んでおいたほうがいいだろう。一人分の、日持ちのするものを買って帰ろう。このところ、二人分の用意をするのに慣れていたから、まちがえないように気をつけないと。
 そんなことでさえ、ちくちくと胸を苛む。クマのいる生活に、少し慣れすぎたのだ。
 やっぱり彼女ほしいな。職場で聞いてみようかな。
 そんな風につぶやいてみる。
 駅前近くの商店街のクリーニング店にシャツをあずけた。クリーニングの終わったシャツを受け取り、袋に入れ直して、スーパーに向かう。
 休日の夕方のスーパーは混んでいた。特に子供がきゃあきゃあ騒ぎながら、団体で入り口前のスペースではしゃいでいる。楽しげな音楽が聞こえてきた。何か、イベントでもやっているのだろうか。
「ねーねー、ふーせん、ふーせんー!」
「はいはい、ちょっと待って」
「クマがしゃべるなよー」
「クマだって喋っていいだろ。クマ差別だぜ、それ」
 遊戯はあっけにとられた。
 クマが、あのうちに居たクマが、スーパーの前で色とりどりの風船を持って、あつまってくる子供たちに渡しているのだ。
「こら! 蹴んな!」
 わーー!と子供たちはクマに追いかけられてはしゃいで逃げていく。クマはうおー!と襲いかかる真似をして、ちょっとだけ追いかけたあと、またすぐに風船の置いてある場所にもどった。まったくもう最近のガキどもは……とぶつぶつ言いながら、顔をあげる。
 遊戯と目が合った。
「よう」
 クマは手をあげた。
「うん」
 遊戯は、こくんとうなずいて、クマの前に出て行った。
「そういう格好してると、年相応っぽいな」
 これやるよと、クマは赤い風船を遊戯に手渡してくれた。風船にはスーパーの名前と開店10周年記念という文字が書いてある。
 年相応ってなんだろうと思いながら、遊戯はクマにたずねた。
「なにやってんの?」
「バイト」
「ばいと?」
「うん」クマはうなずいた。「この格好でもできるバイトって探してたらよ、ここのスーパーのおばちゃんに見込まれて」
「はあ」
「6時で上がりなんだ。もうちょっとだから、一緒に帰ろうぜ」
 遊戯は、ぽかんと狐に抓まれた気持ちになったが、とりあえず「じゃあその間に買い物してくるよ」と返事をした。