今回は性的描写しかありません。
おまけに、クマがちと乱暴気味です。
ご注意ください。

話的には、この回を読まずに
次に進んでもまったく問題ありません。
そのような話が苦手な方は、
この回は読まないことをお薦めします。

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◆3

 状況がわからない。
 こんな城之内は初めてだった。最初のときだって、無理矢理だったけれども、こちらに危害をあたえないようにしてくれた。いやらしいことを囁かれたり、恥ずかしいことをされたりはしたけれど、恐怖感はなかった。
 でも、今は怖い。
 どうして怒っているんだろう。遊戯には見当もつかなかった。何か気に障るようなことを言ったのだろうか。きっと何かの誤解だ、話がしたいと思っても、口枷となったタオルのせいで、まともにしゃべることもできない。「城之内くん」と名前を呼んでも、ただのうなり声に変換されてしまう。
 口内のタオルがぐっしょりと濡れている。
 唾をうまく飲み込むことさえできずに、頬を伝い落ちる。
 着ぐるみのふかふかの手が、遊戯の胸もとを弄じった。
 びくりと背中を反らしてしまう。
 いつもなら暖かくて心地ささえ感じるのに、今日は性感だけを煽られる。
「感じやすい身体になったよな。ここ触るだけで、立つもんな、お前」
 城之内の声がふってきて、遊戯はびくりと上を向いた。
 その声にはなんの感情もみえなかった。
 城之内は、遊戯のほそい足首をにぎった。遊戯はびくりと震えた。そのまま、薄い胸もとにぐいと押しつける。ふくらはぎと太ももがくっつき、足が二つ折りになった。その体勢のまま、城之内は遊戯の手首と足首をしばりあげた。反対側も同様に縛る。小包みのように手早く縛られた。抵抗する余裕もなかった。
「M字開脚ってさ、興奮する?」
 冷静な声だった。遊戯は身をすくめた。
 大きく足を開かされて、城之内の眼前にさらけ出されている。見えないのに、視線を痛いほど感じた。興奮はしていない。そう遊戯は思った。ただ羞恥心は、いつにないほど高まっている。こんな格好をさせられているところも、貧弱な自分を見せていることも、恥ずかしくてたまらない。
 遊戯を放置し、城之内は全裸になった。冷蔵庫からペットボトルを取りだし、じっと遊戯の様子を見ながら水を飲んだ。どろどろとした熱く黒いマグマのようなものが腹のそこから吹き上がってくる。理由はよくわからない。ただ遊戯を傷つけたいと思った。衝動が心の中で吹き荒れていて、止められそうもなかった。
 城之内は飲み残しの水を、自分の頭にふりかけた。その水が、ベッドの上の遊戯にもこぼれ落ちる。そのつめたさに遊戯はうろたえた。状況がわからない。
 城之内くんは何をするつもりなの?
 城之内には、とまどう遊戯の姿が愉快だった。空になったペットボトルを投げ捨てる。
 もっとしたい。
 どうにかしたい。
 追いつめたい。
「立ってるぜ」耳元であざ笑うように揶揄してやる。「こんなんで、興奮してんだ。ハムみたいにぐるぐる巻かれて転がって興奮するような男なんだ、お前は」
 傷つけばいい。
 遊戯は、無駄だとわかっていたが声を出した。否定を示すように首を振った。
「声だして喜んでんじゃねぇよ、変態」
 ぽきんと簡単に折れてしまいそうな細い首筋をきつく吸い上げる。首輪の下を舐めると、遊戯の汗の味がした。
「いっつも、こんな格好してよ」城之内は、首輪をひっつかんで引き寄せた。頭がぐらぐらとゆれた。「変態だよな。調教されてたんじゃねぇの、誰かに」手足をしばりあげられた遊戯は抵抗できず、人形のようにされるがままだった。
「会社とかいってるけど、毎日ホントは男のチンコくわえこみに行ってんじゃねぇの? バイブでも突っ込まれて、ひんひんよがり狂ってうれしがってんだろ?」
 なんで、そんなことを言うんだよ。
 遊戯は、城之内の声のする方向に顔を向けた。タオルの下で目を開けて、にらむ。
「生意気なんだよ」
 ぎりっと歯がくい込むほどきつく肩口に噛みつかれた。痛い。それなのに悲鳴は、くぐもった音に変化してしまう。
「突っ込んでもらいたくて、うずうずしてるくせに」
 城之内は双丘の中心にふれた。なにもせずに濡れるわけがない。めんどくせぇ。城之内は、チッと舌打ちをすると、おざなりにそこを舐めた。
「!」
 遊戯が反応をしめした。それにかまわず、唾をたらす。足りない。
 ふるりと震えているちいさなペニスをぎゅっと握りしめた。先端からすこし透明な露があふれていたものの、潤滑剤の代わりに使うことはできそうになかった。
 城之内は身体を起こした。遊戯の口の中につまっていたタオルを引き抜く。
 たまっていた唾液がどろりと、あごをつたいおちた。城之内はその小さな口に指先を突っ込んだ。
「噛むなよ」
 強引に唾液をすくいとる。
「うっ……!」
 指先が離れると、遊戯はげほげほと咳き込んだ。城之内は、唾液で濡れたタオルで遊戯を濡らした。そのあと手のひらの唾液をたらす。ぐちゃぐちゃと粘液質の音がして、いきなり指先が、遊戯のなかに入ってきた。
「いやだっ!」
 優しさの欠片もない指先は、ただ遊戯の内壁をひろげるためにだけ動いていた。ぐちぐちと入り口を広げて、すぐに指先を増やされる。痛い。
「なんで、こんなこと、するんだよっ!」
 苦痛に耐えながら、遊戯は訴えた。泣きたくないと思ったが、涙があふれた。布地に吸い取られて見えないことだけが救いだった。理不尽な行為をされて、哀れみを請うような真似だけはしたくなかった。
「オレが知るかよ!」
 城之内は吠えた。
 わかるかよ。どうしてこんなに腹がたつのか、くやしいのか、苦しいのか。オレにわかるかよ。こんな姿を他のやつにも見せたくせに。
 許せるわけ、ねぇだろ。
 城之内は自分のものを擦りあげた。すぐにそれは固くなった。暗いどろどろとした情欲がそのままかたまりになったかのようだった。遊戯の入り口にあてる。彼の身体がすくむのを感じとると、なぜか喜びのようなものが城之内の身体の内側を満たした。
 もっと怯えろよ。
 オレに犯されて、苦しめばいい。
「あ……っ!」
 城之内が入りこんだ。遊戯が悲鳴をあげた。ろくに馴らしていないそこはきつかった。挿入の快感よりも痛みがあった。それが心地よかった。遊戯の足をかかえて、ぎしぎしと動く。きつい内壁が、城之内をぎちぎちに包み込んで苦しいほどだった。裂けるかもしれない。それでかまわないと城之内は思った。痛いほうがよかった。苦しいほうがよかった。自分の胸のほうが苦しかった。なんで、こんな気持ちになる。
 わかんねぇよ、遊戯。
 遊戯は、城之内の身体の下で苦痛に喘いでいる。
 ひっくり返ったカエルみたいな格好だ。みっともねぇし、やせっぽちの男の身体だ。色気のかけらもねぇ。こんな身体を抱いたやつが他にいるのか。この肌の感触を味わったやつがいるのか。誰なんだよ、それ。
 城之内は、遊戯の乳首をちぎるようにきつく噛んだ。泣き声が心地よかった。腕にかぶりついて歯形を残す。挿入している部分の痛みが、だんだんと快感に変換されていく。人間の身体って便利だよな。なんでもよくしてしまう。城之内は遊戯を突き上げた。
 わかんねぇ。ぜんぶ、わかんねぇ。
 なんで、オレはそんなことを気にしてる。どうでもいいじゃねぇか、こいつが誰と寝ていようが。なんで胸が苦しい。なんなんだよ、これは。
「城之内、くん……!」
 嫉妬してんのか。オレは。
 そんなことあり得ないだろうと思いながら、城之内は遊戯の中に射精した。